2016年5月5日木曜日

熊本地震-4 2016.5.2


発生研HPに掲載したものです。
避難した留学生や海外の研究者に向けた英語版も作成中です。
発生研 HP
http://www.imeg.kumamoto-u.ac.jp


地震から復旧途上 2016.5.2


発生研の基金へのご協力、ありがとうございます。多くの研究者の方から、また20-30年会っていない高校・大学の同級生からも、激励のメールと寄附をいただいています。そのメーリングリストに並んだ名前をみると懐かしくて泣けてきます。多くの学会や大学・研究所からも様々なご支援をいただき、文科省の方々とも連日のように連絡をとっています。皆様、本当にありがとうございます。

所内メンバーの奮闘で、発生研もかなり片付いてきました。いくつかのトラブルはあったものの、漏電チェックは概ね順調に終わり、多くの機器が接続可能な状態になりました。メーカーの方々が熊本入りし、基本的な機器の作動チェックが始まっています。あんなにひどい状況からここまで早く復旧が進んだのは、発生研の全スタッフ、リエゾンラボ研究推進施設 (LILA) の皆さん、ビルの管理人さん、センター事務の方々、大学院生の皆さん、業者・メーカーの方々が一つのチームとして貢献してくださったおかげです。皆さんを誇りに思います。そしてありがとうございます。

建物の損傷に加えて、特に高層階の研究室は基本的設備(実験台や細胞培養装置、顕微鏡、解析用PCなど)に大きな被害を被っています。固定はしてありましたが、1ヶ所では不十分で、固定器具が壁から抜け落ちて転倒したものが多数あります。共通機器も使い勝手を考えて、2, 5, 8階に配置されていましたが、5階と8階の多くが落下・転倒しました。特に机上に置くタイプの高額機器の被害が大きいです。東北の震災を契機に対策はとったつもりでしたが、まだまだ不十分だったということです。どこか人ごとだったのかもしれません。大きな反省点です。今後高層階をどう使っていくかは難しい課題です。機器を低層階に下ろせば、人が上層階に動くことになり、それもまた問題です。早急に検討していきたいと考えています。

本荘中地区キャンパスには、発生研を含めて4つの高層ビルが並んでおり、マウスを用いた研究の拠点となっています。例えば発生研がマウスを用いて身体や臓器のでき方を調べることは、iPS細胞からの臓器再建にも貢献するため、熊本大学の大きな強みとなっています。マウス施設(生命資源研究・支援センター)も全国の拠点として、遺伝子改変マウスの作成・維持・保存に貢献しています。マウス研究は研究者、マウス、解析機器の3つが揃ってはじめて成果がでます。幸い、研究者は誰一人失われていません。マウス施設の建物は損傷したものの、マウスは危機を脱し、安定に維持されています。しかし、多数の解析機器が落下・転倒し、破損・故障しました。熊本大学の研究室の多くは裕福ではありません。それでも世界と伍する成果を出してきた秘密は、共通化にあります。マウス施設を共通化し、最先端かつ高額な機器を共通化し、共通の支援員がサポートすることによって、個々の研究室は小さくても成果を挙げてきたのです。その生命線である共通機器が破損したのは極めて痛いです。これらは発生研だけでなく他の3つの建物、さらには隣の医学部キャンパスにも分散して存在し、皆で共有してきました。また発生研は文科省指定の共同利用・共同研究拠点であり、全国の研究者が来所し、これらの機器を使用して研究します。それも現時点ではできなくなっており、熊本大学だけでなく全国の研究に支障がでています。一刻も早く共通機器を復旧して、研究の最前線に復帰せねばなりません。それがサイエンスのため、最終的には患者様のためになります。また機器を収納し、研究の場となる建物の修復も急務であることは言うまでもありません。

残念ながら余震と交通網寸断のためメーカーの方々の熊本入りが遅れ、連休でさらに遅れます。対象機器も多数に及ぶので、被害状況の全貌が判明するのは5月中旬から下旬になるでしょう。これらの機器は一つ数千万円以上のものが多く、被害総額は莫大なものになると思われます。そこから予算の交渉、修理や買い替えの発注、入札、製造、納品を考えると、数ヶ月から1年という時間がかかるかもしれません。この時間、つまり研究の遅れを最小限にすべく、全力を尽くす所存です。発生研内外の皆様のご支援をお願い致します。また上記のようなことは、発生研の立地する地区だけではなく、すべての建物、学部・部局で起きています。研究だけでなく、母国に避難している留学生を呼び戻す費用、家やアパートが損傷した学生への経済的支援、卒業が迫っている学生の教育・研究など課題は山積みです。熊本大学全体に対する基金へのご協力もよろしくお願いします。

地震発生から2週間を越え、発生研の皆さんの疲労はピークに達していると思います。余震が1100回を超えたそうです。私も、特に就寝中の地震は小さくても飛び起きてしまいます。どんどん揺れがひどくなっていったあの本震の恐怖がよみがえるからです。この連休は、無理をせず休んでください。可能であれば熊本を離れて、揺れないところで熟睡してください。私も数日そうしようと思います(用件があればいつでもメールください)。元気を取り戻して、5月9日に再び集まりましょう。そして機器を復旧しつつ、一日も早く研究を再開できることを願っています。全国の皆様も、引き続きご支援のほどよろしくお願い致します。

追伸
緊急事態ということで、所長として前面にたって情報発信してきましたが、今後は本来のやり方に戻そうと思います。広報担当が情報を更新していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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