2019年4月9日火曜日

令和を迎えるにあたって (2019.4.1)

(発生研HPに新年度の所長挨拶として掲載したものです)

2019年度が始まりました。新しい元号が発表されたので、5月からは令和初年度と呼ばれるのでしょうか。

思い起こせば、昭和が終わって平成が始まった日は大雪でした。私は研修医2年目で、栃木の病院にずっと泊まり込んでいました。あれから30年、まさか医者をやめて熊本で研究をしているとは予想もしませんでした。まだ医者の訓練中だった人間が、腎臓内科医として働いたあと、がむしゃらに実験して研究の面白さを知り、ラボを持ち、仲間に恵まれて腎臓がかなり作れるところまでこぎつけました。この30年の間に、PCRやDNA抽出キットが一般化し、ES細胞を使ってノックアウトマウスが作られ、ヒトゲノムが解読され、iPS細胞が樹立され、臓器の遺伝子発現が1細胞レベルでわかるようになりました。e-mailとインターネットが出現し、論文の電子化が進み、スマホでどこからでも大量の情報にアクセ スできるようになりました。驚くべき進歩です。

これからの30年でどんな進歩が起きるのでしょうか。おそらく想像さえできないことが実現されるのでしょう。高度に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない (Any sufficiently advanced technology is indistinguishable from magic)、とアーサー・C・クラークは言っています。不可能を可能にする、それを実現するのは若いあなた自身です。自分の想像を超える可能性を試してください。そして自分が一生かけて解きたいことを見つけてください。先輩として喜んでお手伝いします。発生研の研究環境はコンパクトかつ充実しています。考えつく大抵のことはできますし、さらにやりたいことがでてきたら手を尽くして実現できるようにしています。そうやってみんなで成長してきましたし、それが発生研の原動力となっています。世界の誰も見たことがない、自分にしか見えない景色を見てください。もちろん私も完璧な腎臓作製に向けてさらに挑戦し、自分自身と世界の想像を超えていきたいと思っています。

発生研の現在及び未来のメンバーの奮闘と幸運を祈ります。我々を応援してくださっている方々には、これからもご支援・ご指導のほどよろしくお願いいたします。

熊本大学発生医学研究所 所長  西中村 隆一

2019年1月16日水曜日

Let's start with calamari

昨年(2018年)4月に恩師である新井賢一先生が亡くなられました。追悼文集の一部です。


Let’s start with calamari
             熊本大学生医学研究所 教授 西中村 隆一
       Ryuichi Nishinakamura, Kumamoto University, Japan                 

 初めて大医科研の新井賢一先生をねたのは1990年末でした。真冬にもわらず半袖短パンの人物が今日は暑いですなと言いながられて時間しゃべりそれが終わる頃には私は新井研に入ることになっていました
 新井先生との接点がえたのは医科研にいるときよりもむしろ1993年から2年DNAX研究所に留学させてもらったでした新井先生はDNAXに来るたびに我々若手をSundanceといステキレストランにれ出し散々ご走してくれました最初は必ず ”Let’s start with calamari.”  イカリングのフライです。それからShrimp cocktailなど色々頼んで結構お腹が膨れてきたところでPrime rib steak。私が普通サイズを注文していると横から一番大きいやつにしてくれ手にえてしまい若いんだからこれくらい食べんといかんサイエンスのはほとんどした記憶がなく、楽しい日々でした
  国して、東大医科研のAMGEN寄付座(新井先生が設立に尽力)に加入サイトカインかられての研究を始めましたノックアトマウスで腎臓発生を解き明かしてそれをもとにを作ってみたいとえるとそれは面白い、ノックアウトではなくて作るというのがよい。是非やれと励ましてもらいました。しかし、カエルとマウスを使って生に関わる遺伝子を3年間必死に探したものの全くまくいかないあきらめてサイトカイン研究にかと思って相談するとおまえは生をやるんじゃなかったのか他人の芝生が青いからといってそっちにひょろひょろいくのかと叱られました他人のフェロモンに引き寄せられてよそへ行ってしまのではなくてここできちんとデタを出して自分のフェロモンを出して他人を自分のところに引き寄せられるよになれお前はそなれるはずだこの最後のお前はそなれるはずだというところが新井先生の人たらしなところでそんな茶なと思いながらまた踏んってしまんですよねその甲斐あって新しい遺伝子がとれてのないマスができその知をもとに組織ヒトiPS胞から作ることができるようになってきました。ここまで20年以上かかりましたが、少し頑張ればを丸ごと作れそがしています。今の自分があるのはあの時の新井先生の一喝のおかげです。先生にはとてもかないませんが自分も少しはフェロモンを出せているでしょ一度あの頃に戻ってcalamariprime rib steakを一緒に食べながらそういう話をしてみたいです。Let’s start with calamari.

宮島先生の背中

昨年(2018年)3月に定年で東大を退任された宮島篤先生への感謝文集の一部です。宮島先生は現在も東大の社会連携講座で研究を継続されています。


宮島先生の背中     
              熊本大学 発生医学研究所 西中村 隆一

 1993-1995年の2年間、DNAX研究所に留学した。当時私は東大医科研の新井賢一先生の大学院生だったが、ノックアウトマウス作成がうまくいっておらず、DNAX研究所に派遣されることになったのである。私がノックアウトの標的としたのは宮島篤先生が単離されたIL3/GM-CSF/IL5の受容体bc bIL3だったので、主にはRich Murray博士の研究室に所属してノックアウトの技術を習得しつつ、宮島先生のラボミーティングにも参加した。一方実験ベンチは新井直子先生のラボの中にいただいたので、3人のPIにお世話になりつつ、誰からも直接の管理を受けないというかなり自由気ままな立ち位置であった。それまで2年以上うまく行っておらず悲壮な覚悟での渡米だったが、Palo Altoはいつも晴天で、実験の待ち時間には近くの丘に登り、憧れのカリフォルニアを満喫した。実験が本格化するまでの1ヶ月間は図書室で小説を読んだりもしていたが、それを見かけた宮島さんから怒られることもなかった。
 当時の宮島研はDNAXLittle Tokyoとも呼んでもよいほど日本人を含む東洋人の比率が多く、不夜城であった。午前1時に帰宅するのは早い方で、3-4時はざらであった。私も午前 3-4時に帰宅して、翌朝9-10時に再開するサイクルで過ごした。宮島さんは夜遅くにラボを回って各メンバーに「どうすか?」と進捗を聞いていたが、翌朝にも回ってきて「どうすか?」と聞く。しかし、さすがにその間は睡眠に充てるしかなく、どうすかと聞かれても困るよねと岩本隆司さんがこぼしていた。私は直轄メンバーではないのでそういうことがなく彼に羨ましがられた。実際、実験の進捗はラボミーティング以外で聞かれたことはなく、急かされた記憶もない。本当に自由にやらせていただいた。高価な試薬も、理由も聞かずに承認のサインがもらえたし、DNAX研究所の宮島研はパラダイスであった。
 ラボを回っている時以外は、宮島さんは大抵自分の居室にいたが、廊下に面したドアにはガラス窓がついていて、中が見えた。宮島さんはいつも机に向かって何か書いていて、その背中が強く記憶に残っている。ほんとに勤勉に机に向かっていて、廊下を通るたびにいつも背中だけが見える。お気楽な大学院生であった私は、その背中をみる度にラボを運営するのはなんだかとても大変そうだと感じたものである。思えばあの頃の宮島さんはまだ40才台になったばかり、今の私より10年以上若い。研究構想を練ったり、次から次へと上がってくる論文の手直しをしたりしていたのであろうか。実際、私の初めての論文は当初Rich Murrayと書き進めていたが、一応形ができたところで宮島さんに見せたら直ちに大幅な修正意見をくらい、Richと板挟みになって困惑したことがある。最終的には宮島案が通り、その御蔭ですんなりとImmunityに採択された。私が研究者を志す大きなきっかけになった論文であり、あの日々がなければ今の私は存在しない。原孝彦さんが鋭い質問を繰り出し、若尾宏さんやAlice MuiSTAT5をクローニングし、北村俊雄さんがretrovirus vectorを立ち上げ、木下大成と一緒にボロ車で毎晩夕食に繰り出す、刺激的で懐かしいあの日々からもう20年以上が経ったとは信じられない。帰国後、私は腎臓発生を始めたが、宮島さんが血液から肝臓発生に転じたこともあって、長く交流が続いている。でも宮島さんといわれると一番に、あの背中が鮮やかに蘇ってくる。私の原点は間違いなくあの背中にある。



2018年9月7日金曜日

北海道地震 2018.9.7

9月6日に北海道で震度7の地震が発生しました。被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。全国報道には上がってこないかもしれないお一人お一人のご苦労が、実感をもって想像できます。一刻も早く原状に復帰されることを祈っております。

私どもが熊本地震の直後にまとめた研究機器の固定法を発生研HPのトップページに再掲載しました。少しでもお役にたてば幸いです。今回の地震も6月の大阪北部地震も全く予期されていない場所で起きました。どこで起きるかわからないという前提のもと、我々研究者がやれるのは機器の固定だけです。高額な機器はもちろん、研究データを保管するPCや緊急連絡・情報共有のためのネットワークサーバーなども極めて大切です。少しの労力で大きな損失を防ぐことができますので、地震が自分のところで起きる前にお願いします。特に4階以上の高層階では、低層階とは異なる強固な固定が必要です。マニュアルを読んでご不明な点は、お気軽に下記までお尋ねください。

お問い合わせ先:
熊本大学発生医学研究所 リエゾンラボ研究推進施設
TEL: 096-373-5786
Mail: imeg*kumamoto-u.ac.jp (*を@に変えてください)

発生研復旧工事完了のご報告  2018.8.3

(2018.8.3に発生研HPに掲載したものです)

熊本大学発生医学研究所(発生研)を応援していただいている皆様、2016年4月の熊本地震からの復旧においては、多大なご支援をいただき、誠にありがとうございます。2017年3月に研究所内部(研究室、設備等を含む)は復旧していましたが、2018年8月1日をもって建物外壁の工事が完了し、ようやく元の状態に戻りました。もちろんこれを待たずに研究活動は速やかに再開しており、所員一同が不自由な研究環境の中で積み重ねた成果が国際学術誌に発表されつつあります。これもひとえに皆様のご厚情の賜物です。重ねて感謝申し上げます。

2016年9月には石黒啓一郎独立准教授が、2018年7月には塩田倫史独立准教授が着任して、ラボを立ち上げました。新しいメンバーを迎えて、発生医学研究を益々加速していきます。今後ともご支援のほどよろしくお願いいたします。

熊本大学 発生医学研究所 所長 西中村 隆一

2018年7月15日日曜日

西日本豪雨 2018.7.15


発生研の皆様(7/13出張中に送ったメールに加筆したものです)

西日本豪雨によって甚大な被害が出ています。熊本地震を経験した身としては、被害の報道に触れるたびに胸が潰れる思いです。

7/13-14に山陽新幹線で出張してきました。沿線からは被害は直接みえませんが、川は茶色く濁って所々に流木が重なり、ローカル線運行休止のお知らせが相次いでいました。新幹線も途中で徐行運転するところがあります(熊本地震の際もそうでした)。

熊本地震の際に全国から寄附をいただいたおかげで私たちは何とか立ち直ることができました。今度は私たちがお返しする番ではないでしょうか。皆様各々が適切と思われるところにご寄附をお願いします。

発生研リエゾンラボのスタッフが調べてくれた寄附先の例は下記の通りですが、これに限りません。よろしくお願いします。

西中村


日本赤十字社
・ゆうちょ銀行 00130・8・635289「日赤平成30年7月豪雨災害義援金」

中央共同募金会
・ゆうちょ銀行 00180・7・634691「中央共同募金会平成30年7月豪雨災害義援金」

スマホで送金できる「LINEペイ」などを通じた寄付受け付け。
詳細は(http://official-blog.line.me/ja/archives/76266400.html)。

2017年12月30日土曜日

年末のご挨拶 2017.12.30

発生研の皆様

今年は昨年よりずっと良い年だったということにはご同意いただけると思います。今年初めには内部の修復が終わり、研究活動は完全に回復しています。外壁の修理も始まり、来年半ばには完了するでしょう。家族と同僚が健康で、それぞれが自分のやりたいことに専念できるという単純なことが、如何に幸せで貴重なことかを実感させられた日々でした。年末にあたって、皆様一人ひとりに深く感謝いたします。

発生研は年明け1月11-12日に国際シンポジウムを主催します(中村先生、丹羽先生、高村さんはじめ多くの方にご尽力いただいています)。発生研の復活をアピールしつつ、次の展開に向けた国際的な人材のネットワークを作っていければと考えています。どうぞご参加ください。http://www.keyforum2018.org/

来年がさらに良い年でありますように。

西中村


Dear all IMEG members,

I am sure that all of you agree that this year was much better than last year. Our scientific environment was restored in the beginning of this year, and we are now in full operation. Repairs of the outer wall has begun and will be completed in the middle of next year. I have realized that it is precious that all family members and colleagues are healthy and able to concentrate on what they really want to do. I would like to express my deepest appreciation to all of you.

On January 11-12 of next year, our institute will host an international symposium. We hope the symposium will show off the revival of IMEG and help create a network of international talent for the research in the future. I welcome your active participation.  http://www.keyforum2018.org/en/top/

I wish all of you a happy new year!

Best wishes,
Ryuichi Nishinakamura