2001. 9.11 私はLos Angeles 近郊のAMGEN本社を訪問することになっていました。当時所属していた東大医科研AMGEN寄附講座の延長を交渉するため、研究所でのセミナーと副社長(研究開発担当)との面会が予定されていました。しかし、朝ホテルで起きてくると、ロビーのテレビの前に人だかりができている。World Trade Center collapsedのheadlineを理解するのに相当時間がかかりました。LAはNYと3時間時差があるので、LAの早朝にはそういう状況でした。全機着陸が指示されたものの行方不明の飛行機があり、その中にはLAに向かっているはずのものも数機あって、LAにも突っ込んでくるのではないか、といった話がホテル客の間で流れました。AMGENも日本の寄附講座延長交渉どころではなく、すべての予定はキャンセルされました(副社長は少しだけ会ってくれましたが)。AMGEN社員もテロにあった飛行機に乗っていたそうです。
航空系統がすべて止まったため、同行してくれていた新井医科研所長と日本AMGENの吉田社長(いずれも当時)とともに、LAに足止めを食らいました。戦争が始まるのではないかといった噂も流れ、そうすると妊娠中の妻が待つ日本には半年−1年くらい帰れないかもしれないとも思いました。毎日日本への航空機に予約を入れるのですが飛ぶわけもなく、何日も過ぎました。ようやく日本からANAが一機LAに向かったという情報が妻から入りましたが、LA空港の情報は錯綜しており、最初は否定されました。それでも確認すると、どうやら飛ぶらしいということになって、LAから日本に向かう最初のANA機に乗れることになりました。しかし空港は恐ろしいほどの厳戒態勢で、首尾よく乗れてもまたハイジャックされてしまうかもしれない。これほど飛行機に乗るのに緊張したことはありません。
しばらくしてAMGENは寄附講座の閉鎖を決定しましたが、私をAMGENの研究所に雇ってもよいということで、再びAMGEN本社へ行ってセミナーをし、多くの研究者と面会しました。確かにアメリカの製薬企業の環境は素晴らしく、資金も豊富で、すごいことができそうでした。しかしAMGENは私に腎臓ではなく骨をやってほしいとのことでした。ここまでやってきた腎臓発生をやめるのか。。。迷いながら正直に話をした副社長(前述とは別人。臨床開発担当)が言った言葉が "You do best what you like best. "(自分が最もうまくやれるのは自分が最も好きなことだ)。ああそうだな、自分は腎臓が好きだ。どんなにきつくても、お金がなくても、一人であっても、腎臓を続けよう、と思いました。AMGENへの就職は丁重にお断りして、腎臓研究を続けられる場所を懸命に探しました。幸い熊大発生研に研究室をもつことができました。2001年のテロから12年。あの時腎臓発生研究をやめなくて本当に良かったと思います。多くの人が巣立ち、これからも育ちます。彼らが出す成果は腎臓再生に向けて大きく貢献するでしょう。私もまだまだ頑張ります。
2013年9月11日水曜日
2013年3月11日月曜日
研究者の心得
東日本大震災から2年。亡くなった方々に対して黙祷を捧げます。
人工透析の方々も大変な目にあわれたました。基礎の研究者が直接貢献できることは少ないですが、自分のやれる範囲内でベストを尽くすしかありません。
研究者は自分の好きなことを勝手にやれる特権階級ではありません(自分のためだけにやる研究は趣味です)。大学が完全に自由で何をどうやってもよいということはなく、社会とつながっている点で同じです。
1. この困難な時期に研究に対して税金を払ってくれる国民や患者さん、研究を支えてくれる技術支援や事務支援の方々、に思いを馳せ、その期待に応えられる様に(恥ずかしくないように)自分を律して研究すること。
(この思いの大きさがその人の研究人生を支えます)
2. 社会人として最低限の基本を身につけること。
当たり前のことですが。。。
挨拶はしっかりする
lab meetingには絶対に遅刻しない。無断欠席もしない。 (皆の貴重な時間である。memberの仕事に敬意を払い、積極的に参加する)
掃除は皆でやる (他人が自分に奉仕してくれるのが当然ではない。上の立場になるほど率先してやる)
他の人のために働く(同僚の支援、ラボの維持、書類など、頼まれたら快く受ける。自分からみつけて動く。「自分の仕事ではない」ことなどない)
助けてもらったら必ず感謝する(誰に対しても。思いがあれば自然とでるはず)
報告はこまめに関係者全員に、お願いは礼儀正しく(メールのccや口頭で。重複して悪いことはない)
3. この基本をおさえた上で、チャレンジする
十分相談した上で、失敗を恐れず、まずやってみる(やらない理由は100もある)
リスクをわかった上での失敗は非難されるものではまったくない
打席にたつことが大事 1打数1安打より10打数3安打の方が優れている
本人も予測しなかったことがわかるのが自然科学の醍醐味であり、自然は人智を越えています。
自分を含めて世界を感動させる(ワクワクさせる)のが研究者の本分です。それができなくなったり、自分のためだけにscienceを使ったりするようになったら、ピペットマンを置くべきでしょう。それが研究者の矜持というものです。
人工透析の方々も大変な目にあわれたました。基礎の研究者が直接貢献できることは少ないですが、自分のやれる範囲内でベストを尽くすしかありません。
研究者は自分の好きなことを勝手にやれる特権階級ではありません(自分のためだけにやる研究は趣味です)。大学が完全に自由で何をどうやってもよいということはなく、社会とつながっている点で同じです。
1. この困難な時期に研究に対して税金を払ってくれる国民や患者さん、研究を支えてくれる技術支援や事務支援の方々、に思いを馳せ、その期待に応えられる様に(恥ずかしくないように)自分を律して研究すること。
(この思いの大きさがその人の研究人生を支えます)
2. 社会人として最低限の基本を身につけること。
当たり前のことですが。。。
挨拶はしっかりする
lab meetingには絶対に遅刻しない。無断欠席もしない。 (皆の貴重な時間である。memberの仕事に敬意を払い、積極的に参加する)
掃除は皆でやる (他人が自分に奉仕してくれるのが当然ではない。上の立場になるほど率先してやる)
他の人のために働く(同僚の支援、ラボの維持、書類など、頼まれたら快く受ける。自分からみつけて動く。「自分の仕事ではない」ことなどない)
助けてもらったら必ず感謝する(誰に対しても。思いがあれば自然とでるはず)
報告はこまめに関係者全員に、お願いは礼儀正しく(メールのccや口頭で。重複して悪いことはない)
3. この基本をおさえた上で、チャレンジする
十分相談した上で、失敗を恐れず、まずやってみる(やらない理由は100もある)
リスクをわかった上での失敗は非難されるものではまったくない
打席にたつことが大事 1打数1安打より10打数3安打の方が優れている
本人も予測しなかったことがわかるのが自然科学の醍醐味であり、自然は人智を越えています。
自分を含めて世界を感動させる(ワクワクさせる)のが研究者の本分です。それができなくなったり、自分のためだけにscienceを使ったりするようになったら、ピペットマンを置くべきでしょう。それが研究者の矜持というものです。
2012年10月9日火曜日
祝 山中教授ノーベル賞受賞
山中さんがノーベル賞を受賞しました。
彼は私と同学年、ノーベル賞としては非常に若い受賞です。
10年近く前にSall4 KOで競争したことがあり、それ以来の知り合いです。正直でユーモアに富む好人物です。熊大発生研の客員教授でもあり、会う機会は多く、私の研究室でも彼の作ったiPS細胞を使っているし、私の教え子も彼の研究所で働いています。
彼の発見はとんでもなく大きなもので、今回の受賞は我々日本の研究者にとっての誇りです。と同時に、同い年の彼に随分離されてしまったので、もう一度気合いをいれて頑張ろうと思っています。
彼は私と同学年、ノーベル賞としては非常に若い受賞です。
10年近く前にSall4 KOで競争したことがあり、それ以来の知り合いです。正直でユーモアに富む好人物です。熊大発生研の客員教授でもあり、会う機会は多く、私の研究室でも彼の作ったiPS細胞を使っているし、私の教え子も彼の研究所で働いています。
彼の発見はとんでもなく大きなもので、今回の受賞は我々日本の研究者にとっての誇りです。と同時に、同い年の彼に随分離されてしまったので、もう一度気合いをいれて頑張ろうと思っています。
2012年8月4日土曜日
孤独を恐れない
自分のキャリアを形成する上で、孤独を恐れないことは大切です。前の人が歩いた道を歩いている間は安心感がありますが、そこから外れると先は見えないし、砂漠を歩いているような感じになることがあります。例えば医者であれば医局に属している間はルートがある程度みえますが、そこから外れるとどうなるのかわからない。研究者として、学位をとって留学してPIを目指すというルートから外れると、これまたどうなるかわからない。でもそれは決してドロップアウト(脱落)ではない。自分が最初にいたところが最も重要な分野だと思いがちですが、広い目で見るとそうではありません。孤独に耐えて歩いていれば必ず別の道に行き当たるし、そこにはそれぞれにプロがいます。自分が砂漠を横切って歩んだ道を次の人が歩くとき、あなたは先駆者としてその独自性を評価されます。だから他人とは違った生き方をしてください(あるいは、せめてここだけは自分のオリジナルだといえる点をつくってください)。これを実行するには相当な実力が必要で、それがない人がやると、失敗して批判されるだけです。実力をつけて、孤独を恐れずに他人とは違う砂漠を歩いてください。そして10年後に振り返ったら、自分の後ろに道ができているといいですね。
2011年8月29日月曜日
小暮君に恥ずかしくない生き方をできているか?
私が東大病院の研修医(24才)のときに、小暮君という高校生を担当しました。難治性の急性リンパ球性白血病で既に入退院を繰り返しており、私の半年間の担当後も、徐々に退院している時期が短く、入院が長くなっていきました。しかし、彼は明るく素直な性格で、大学に向けた勉強も続けており、内科のスタッフ全員に愛されていました。私も退院中にご飯に誘ったり、入院したと聞けば栃木(自治医大)から見舞いにでてきたりしていましたが、数年後の10月に亡くなりました。その日、何も知らない私がのんびりバスから降りてくるまで、ご両親は亡くなった息子さんと一緒にずっと病院の裏で待っておられました。それ以降、10月になるとお母様にハガキを書き、丁寧なお返事をいただくことが20年以上続いています。一人息子を亡くすことが如何につらいかは、子供を持って改めて実感しています。
私は結局、血液学ではなく腎臓学を専門にしたわけですが、 10月が近づく度に、彼に恥ずかしくない生き方ができているか自問します。すぐに役に立つのは無理でも少しでも科学の発展に寄与できているか、怠けていないか。あれから20年以上たっても自分はほんの少ししか進んでいない、もっと急がねば、と思わせられます。
私は結局、血液学ではなく腎臓学を専門にしたわけですが、 10月が近づく度に、彼に恥ずかしくない生き方ができているか自問します。すぐに役に立つのは無理でも少しでも科学の発展に寄与できているか、怠けていないか。あれから20年以上たっても自分はほんの少ししか進んでいない、もっと急がねば、と思わせられます。
2011年6月28日火曜日
成果とは打率である
最近気に入っているドラッカーの一節です。
成果とは百発百中のことではない。長期のものである。間違いや失敗をしないものを信用してはならない。それは無難なこと、くだらないことにしか手をつけないものである。
成果とは打率である。人は優れているほど多くの間違いをおかす。優れているほど新しいことを試みる。
打率が低いのは論外ですが、頭が良い人はいろいろ考えてやらない理由を挙げがちです。しかしその予測を越えたところに生命科学の本当の面白さがあります。やらない理由を100挙げるよりまずやってみることが大事。
寺田寅彦も同じことを言っていると思います。
科学者は頭が良いと同時に、頭が悪くなければならない。
成果とは百発百中のことではない。長期のものである。間違いや失敗をしないものを信用してはならない。それは無難なこと、くだらないことにしか手をつけないものである。
成果とは打率である。人は優れているほど多くの間違いをおかす。優れているほど新しいことを試みる。
打率が低いのは論外ですが、頭が良い人はいろいろ考えてやらない理由を挙げがちです。しかしその予測を越えたところに生命科学の本当の面白さがあります。やらない理由を100挙げるよりまずやってみることが大事。
寺田寅彦も同じことを言っていると思います。
科学者は頭が良いと同時に、頭が悪くなければならない。
2011年3月27日日曜日
論文はgoogle readerで読む
これだけ論文雑誌が多いとフォローするのは大変です。top journalに絞っても、そのサイトを定期的に訪問するのはつい忘れがちです。しかし、これらにはフィード(RSS)がついているので、これを使ってgoogle readerで読めば1カ所のサイトでの管理が可能です。どのPC(あるいはsmart phone)からでも未読既読の管理ができ、ざっと目を通して印をつけておきあとで読み返すなど、劇的に楽になります。かつ自分自身のdatabaseができあがります。
Pubmedでkeyword検索した際に結構いいリストになったと思った際には、それをRSSとしてgoogle readerに登録すれば、その条件で新しい文献が自動的に追加されていきます。my NCBIにも同様の機能がありますが、これも全部google readerにまとめるということです。詳細は下記に載っています。
http://togotv.dbcls.jp/20101104.html
Pubmedでkeyword検索した際に結構いいリストになったと思った際には、それをRSSとしてgoogle readerに登録すれば、その条件で新しい文献が自動的に追加されていきます。my NCBIにも同様の機能がありますが、これも全部google readerにまとめるということです。詳細は下記に載っています。
http://togotv.dbcls.jp/20101104.html
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