私が東大病院の研修医(24才)のときに、小暮君という高校生を担当しました。難治性の急性リンパ球性白血病で既に入退院を繰り返しており、私の半年間の担当後も、徐々に退院している時期が短く、入院が長くなっていきました。しかし、彼は明るく素直な性格で、大学に向けた勉強も続けており、内科のスタッフ全員に愛されていました。私も退院中にご飯に誘ったり、入院したと聞けば栃木(自治医大)から見舞いにでてきたりしていましたが、数年後の10月に亡くなりました。その日、何も知らない私がのんびりバスから降りてくるまで、ご両親は亡くなった息子さんと一緒にずっと病院の裏で待っておられました。それ以降、10月になるとお母様にハガキを書き、丁寧なお返事をいただくことが20年以上続いています。一人息子を亡くすことが如何につらいかは、子供を持って改めて実感しています。
私は結局、血液学ではなく腎臓学を専門にしたわけですが、 10月が近づく度に、彼に恥ずかしくない生き方ができているか自問します。すぐに役に立つのは無理でも少しでも科学の発展に寄与できているか、怠けていないか。あれから20年以上たっても自分はほんの少ししか進んでいない、もっと急がねば、と思わせられます。
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