(発生研HPに新年度の所長挨拶として掲載したものです)
2019年度が始まりました。新しい元号が発表されたので、5月からは令和初年度と呼ばれるのでしょうか。
思い起こせば、昭和が終わって平成が始まった日は大雪でした。私は研修医2年目で、栃木の病院にずっと泊まり込んでいました。あれから30年、まさか医者をやめて熊本で研究をしているとは予想もしませんでした。まだ医者の訓練中だった人間が、腎臓内科医として働いたあと、がむしゃらに実験して研究の面白さを知り、ラボを持ち、仲間に恵まれて腎臓がかなり作れるところまでこぎつけました。この30年の間に、PCRやDNA抽出キットが一般化し、ES細胞を使ってノックアウトマウスが作られ、ヒトゲノムが解読され、iPS細胞が樹立され、臓器の遺伝子発現が1細胞レベルでわかるようになりました。e-mailとインターネットが出現し、論文の電子化が進み、スマホでどこからでも大量の情報にアクセ スできるようになりました。驚くべき進歩です。
これからの30年でどんな進歩が起きるのでしょうか。おそらく想像さえできないことが実現されるのでしょう。高度に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない (Any sufficiently advanced technology is indistinguishable from magic)、とアーサー・C・クラークは言っています。不可能を可能にする、それを実現するのは若いあなた自身です。自分の想像を超える可能性を試してください。そして自分が一生かけて解きたいことを見つけてください。先輩として喜んでお手伝いします。発生研の研究環境はコンパクトかつ充実しています。考えつく大抵のことはできますし、さらにやりたいことがでてきたら手を尽くして実現できるようにしています。そうやってみんなで成長してきましたし、それが発生研の原動力となっています。世界の誰も見たことがない、自分にしか見えない景色を見てください。もちろん私も完璧な腎臓作製に向けてさらに挑戦し、自分自身と世界の想像を超えていきたいと思っています。
発生研の現在及び未来のメンバーの奮闘と幸運を祈ります。我々を応援してくださっている方々には、これからもご支援・ご指導のほどよろしくお願いいたします。
熊本大学発生医学研究所 所長 西中村 隆一
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